尾瀬   八海山(1811m)、新カッパ山(1822m)、旧カッパ山(1892m)、大白沢山(1942m)、白沢山(1952.8m)、スズヶ峰(1953m)、赤倉岳(1959m)、岳ヶ倉山 (1816.1m)  2011年4月29〜30日

所要時間
4/29 6:56 鳩待峠−−7:48 山の鼻−−8:17 猫又川を渡る−−8:36 背中アブリ沢−−8:40 尾根取付(休憩) 8:58−−10:00 八海山(休憩) 10:28−−10:39 1697m鞍部−−11:17 カッパ山(休憩) 11:32−−12:26 1898m峰−−12:43 カッパ山−−12:54 1850m鞍部(荷物デポ) 13:06−−13:22 大白沢山 13:29−−13:38 1850m鞍部 13:57−−14:30 1911m南側1870m付近(幕営)

4/30 4:56 幕営地−−5:05 1911m峰−−5:22 1790m鞍部−−5:52 白沢山 6:01−−6:41 1920m峰−−6:50 1911m峰−−6:54 幕営地 7:22−−7:51 ススヶ峰−−8:02 1910m肩 8:06−−8:59 赤倉岳 9:11−−10:03 1910m肩 10:24−−11:10 岳ヶ倉山(休憩) 11:18−−11:43 1663m峰−−11:50 1650m肩で稜線を外れる−−12:00 猫又川右岸−−12:43 山の鼻(休憩) 12:59 −−14:10 鳩待峠

ルート図(クリックで等倍表示)



概要
 鳩待峠を起点に1泊2日で尾瀬ヶ原奥の猫又川源流山域をCCWに周回。残雪豊富で薮を目にすることはほとんど無く薮漕皆無だったのはいいが、新雪の下の雪が締まっておらず少々ラッセル状態でワカンでも疲れた。危険箇所も無くピッケル、アイゼンの出番は皆無でワカンだけ使用した。地形的に危険箇所は無く初心者でも安心して歩けるが、だだっ広い地形が多く目印も少なくガスられると進路見極めが非常に困難であり好天時を狙いたい。南北方向の稜線上はうねった雪庇でアップダウンが激しく雪庇の風下側が歩きやすい場所が多かった。猫又川の渡渉が難関だがちょうどいい倒木があって1416m標高点付近で左岸に渡れた。天候は2日とも午前は晴れ、午後は霰や雨が降ってイマイチだったがガスがかかることは無かった。

 猫又川の渡渉が難関だがちょうどいい倒木があって1416m標高点付近で左岸に渡れた。残雪が多い今年でこれだから、通常の大型連休ではかなり上流まで行かないとスノーブリッジは期待できない。雪に埋もれた背中アブリ沢を越えて適当な尾根に取り付き、八海山南東尾根に上がりシラビソに覆われた八海山山頂へ。雪庇から尾瀬ヶ原が見下ろせる。1697m鞍部からカッパ山へ登る頃には雪が緩んでワカンでも苦労する。カッパ山山頂は東西に広く最高点不明だが地形図では西端が山頂。ここはシラビソ少なく展望良好。県境の1898m峰は立木なく大展望。旧カッパ山も同様に大展望を楽しめる。大白沢山は東側鞍部から空身で山頂を往復後に北側を巻いたが、露岩を避けて稜線南側を下っても大丈夫だったようだ。ただし山頂西側稜線は全体的に傾斜がきつい。1911m峰は南側の緩斜面帯を巻いて南西側鞍部手前の雪庇東側の影で幕営。

 2日目は幕営場所から白沢山を往復。1911m峰北東側肩でスキーヤーがツェルトで幕営。その先は先行者のアイゼン痕が延々と続いていた。往路では1920m峰西側を巻いたがてっぺんを行っても大したロスにはならない。白沢山山頂はだだっ広く最高点不明。展望良好。復路では合計20人程度の平ヶ岳に向かう登山者(スキーヤーは1人のみ)とすれ違った。これらの足跡は1911mで全て東から登ってきており県境尾根方向は私の足跡のみ。テントを撤収しススヶ峰へ。稜線上は足跡は無かったが東側にはスキー跡と足跡多数。1930m肩でテント発見、ススヶ峰山頂もだだっ広く展望良好。赤倉岳はこれまたテントが残置された1910m肩から往復したが前日に多数が往復したらしく明瞭なトレースができていた。この尾根は思ったより安全でアイゼン、ピッケルの出番は無しで普通に歩けた。赤倉岳はシラビソで西側は見えないがそれ以外はOK。1910m肩に戻るとこれから赤倉岳往復の3名パーティーが出発するところで意外に人気のある山だった。スキーヤーの休憩している1818m峰を越えて一連ピークの一番南が岳ヶ倉山山頂。ここで雨が降り始めてゴアを着て休憩無しで出発したが10分ほどで止んだ。ここで地形図紛失が発覚、どこで県境稜線を降りるのが一番効率的なのか記憶が薄かったが顕著なピークは越えてその先の長いピーク群で下るのが正解だと薄っすら覚えていたが、先行者の足跡がその通りに付いていて、それが一般的なコースらしい。猫又川右岸付近に出ると多数の足跡、スキー跡と合流、それを辿って山の鼻へ。休憩中に本降りの雨となり休憩を切り上げて傘を差して出発。川上川沿いに上がって最後に突き上げて鳩待峠に到着した。



 尾瀬ヶ原の北部から西部にかけての猫又川源流部の山脈は未踏のままで、1800〜1900m台の山がいくつも並んでいるおいしい地域でいつか登りたいと考えていた。最近は高い山はネタ切れでいよいよ足を踏み入れることにした。当初は大型連休前半の3日間をかけるつもりだったが天気予報では3日目がNGとなり2日間でまとめる必要があった。やってみないとわからないがもし時間不足なら尾瀬ヶ原に近い山は割愛して後日に回してもよく、まずは奥地を片付けるのを優先したいところだ。あとは雪質が心配か。これにより体力消耗度合いが変わり、行程も変わってくる。こればかりは現場に行かないと分からない。今年は4月に入っても降雪があって雪質の悪い年だったが連休はどうだろうか。

 鳩待峠への県道は開通したことはネットで確認、駐車場料金は暦日計算なので念のため0時以降に駐車場に到着するよう、出発前にパッキング等を全て済ませて出発時間を調整した。沼田ICで降りて鎌田を通過、六軒山に登った頃には見られた雪も今はすっかり消えてしまっている。戸倉への道に入るがこれまた雪は無く、道なりに進んでいくと何やら看板が。止まって見てみると尾瀬戸倉スキー場手前にある鳩待峠への分岐ゲートから先は夜間通行止めで、ゲートが開くのは朝6時だという。昔ここを通ったときにはそのような規制は無かったのだが。せっかくの早朝の雪が締まった時間帯が使えないのがもったいないが入れないのではしょうがない。Uターンして路肩に車を止めて仮眠した。

鳩待峠駐車場 尾瀬ヶ原への登山口


 翌朝、5時前に既に路上に車の列ができており、それに加わってから朝飯を食った。前の車の人は三鷹在住でしかも野崎。私が住んでいる場所の目と鼻の先だった。あちらは尾瀬ヶ原の散策と写真撮影が目的とのことだった。6時より僅かに早くゲートがオープンし、順次車が動き出した。最初は周囲に残雪はみられなかったが奥に進むにつれて積雪ができてきて徐々に増えてくる。まあ、路上は除雪されているので問題ないのだが、まもなく鳩待峠と言うところで問題発生。昼間の雪解けの水が今朝の冷気で凍結し、部分的にテカテカのアイスバーンになっていた。平地ならスタッドレスで問題ないが傾斜地でこれだとスタッドレスでもツルツルで、時々タイヤを空転させながら上がっていく。ところがもう駐車場は目と鼻の先というところで車列が停止。当然、私はドライな路面を選んで停止したが、前の車やもっと後ろの車でアイスバーン上に止まった車があって完全に動けなくなってしまった。一旦停止してしまうと緩い坂でも2Wで上るのは困難で、いついになっても車は動かなくなった。おそらくもっと前の車も上がれなくなったからと予想できた。そこで面倒でもチェーンを装着、止まっている車の脇をすり抜けて上がっていった。チェーン装着中にも4WD車は上がっていくことができたが・・・。鳩待峠の駐車場はまだ空きがあり無事に用地を確保できた。辺りの水溜りも凍り付いて今朝の冷え込みが分かる。駐車料金徴収係がやってきたので2日分の\3500(初日\2500、以降暦日1日毎に\1000)を支払った。峠付近は晴れているがいやらしいことに大白沢山等の尾瀬北部の稜線には雪雲がかかって見えない。さて、予報では一応回復傾向のはずだが晴れてくれるだろうか。

 残雪期に鳩待峠は来たことがあるので迷うことなく山の鼻方面へと向かう。装備はアイゼン、ピッケル、ワカンに冬用シュラフ、燃料満載で今年初めての幕営装備でかなり重かった。出発してすぐにタオルを忘れたことに気づいて空身で戻ったが、最初から運が悪い。今の時間はまだ雪は締まってワカンの出番は無い。もっとも、明瞭なトレースが続いているので雪が緩んだ時間帯でも沈まないかもしれないが。

足跡多数 至仏山はガスが絡む
斜面をトラバースしつつ下る 橋を渡る


 斜面を徐々に下り、やがて川上川右岸沿いを歩くようになる。1箇所だけ川が岸に接近した場所があって高巻きしたが、大げさに登らなくても済んだ。その先は平坦地が続いて橋を渡れば山ノ鼻だった。既にテントが数張り存在し、尾瀬ヶ原に人の姿が見えている。見える範囲の人間は全てスキーヤーだったが、この時期はそんなものかもしれない。

山の鼻 尾瀬ヶ原西端を北上
至仏山に向かう登山者(スキーヤーではない) 猫又川は完全に流れが出ていた


 さて、ここからが本当の山歩き開始だ。まずは猫又川を渡るのが問題で、できるだけ早い段階で渡れれば八海山に直接取り付く尾根に近く無駄が無いのだ。しかし下流に近いほどスノーブリッジがある確率は低くなるので、ある程度遡上は必要であろう。今年は残雪が多いとのことでスノーブリッジが期待できるだろうか。スキーのトレースを無視して猫又川沿いに歩くことにしたが、スノーブリッジは一向に登場しない。やはりこの水量ではダメなのだろうか。倒木が登場する場面もあったが、半分水没していたり、枝が幹の上を向いて生えていたりで適当なものが無い。トレースの無い川岸は踏み抜きが多くなりワカンを装着した。

最初の倒木。半分水没 2つ目の倒木。微妙に渡りにくそう
3つ目の倒木。これを渡った 3つ目の倒木を少し離れた場所から


 そのまま遡上を続け左岸側の1416m標高点がある付近でいい倒木とめぐり合った。幹が途中で2つに別れ、一方が足場、もう一方が手すりにちょうどいい。そしてメインの流れは雪の下でもし木から落ちてもほとんど水没しないのが最大の利点であった。動物が利用した足跡もあり安心して歩ける場所だ。実際、ワカンを履いたまま渡ってみたが全く危険は感じなかった。

尾瀬ヶ原を東に進む 熊の足跡
雪に埋もれた背中アブリ沢 この尾根を登ることに


 左岸側に出てからは八海山から落ちる尾根が出てくるまで尾瀬ヶ原を東に進む。途中、今年初めての熊の足跡に遭遇、昨日のものなので恐怖感は無い。まあ、もう熊の足跡とは慣れっこなので新しいものでもビビることなく周囲に熊がいないが探すだろうけど(写真撮影のため)。尾根を越えて雪に埋もれた背中アブリ沢も越え、ここで進路を北方に変えて上り始める。適当な尾根末端で休憩。既に標高は1450m近いから八海山山頂まで標高差で400mもない。

ブナ林が続く 小規模ながら雪庇がある
尾根に合流 見事なブナ林


 尾根下部はブナ林が広がり、雪に埋もれて地面付近の植生は不明だが、もう笹が登場しているのだろうか。まだ雪は締まってワカンは不要な状態だが脱ぐのも面倒なのでそのまま上がる。背中の荷物が重いが今シーズン初の幕営だからしょうがないか。尾根は右から来る太い尾根に合流、その先で更に太い尾根に合流し、これが八海山から南→南東へ落ちる尾根なのだろう。傾斜が緩み右手に雪庇が出てきて徐々に高山らしくなってきた。標高が上がって植生はシラビソへと切り替わった。

山頂が見えてきた シラビソが増える
八海山山頂 八海山から見た至仏山
八海山から見た尾瀬ヶ原


 そのまま尾根を詰めて傾斜が無くなって最高点に到着、ここが八海山山頂のはずだが目印、山頂標識とも皆無だ。念のためGPSの電源を入れて確認したが山頂に間違いなかった。もしかしたら残雪が多くて埋もれているのだろうか? 基本的にシラビソ樹林で展望が無いが、東から南にかけては雪庇が発達して高い木が無く尾瀬ヶ原を見下ろすことができた。

北東へ下る ワカンでもこれだけ潜る


 さあ、次は新カッパ山だ。現在の地形図のカッパ山は八海山北方の1822m峰だが、昔の地形図では更に北方の県境尾根上の1892m峰がカッパ山だった。せっかく来たのだから両方の山頂を踏むことにしていた。八海山の下りに掛かるといた斜面で日当たりが悪いからだろうか、雪が締まっておらずワカンでもボッカボッカのラッセルだが下りだから重力の助けでガンガン歩ける。ただ、ならだかな尾根でシラビソが繁茂して視界が制限され、尾根真ん中を歩いているのか全く分からないのでジグザグに歩いて尾根を外していないか確認しながら進んだため、もし後から人が来たら酔っ払いのトレースか?と思ったかもしれない。

鞍部付近。シラビソに新雪が乗っている 重い雪に苦労して登る
再び尾瀬ヶ原が見えてきた 新カッパ山山頂部の一角に到着


 1697m鞍部付近もだだっ広く、どこが最低点と指呼できるような明瞭な地形は無く、少しくらい西に寄って下っても問題なかったみたいだ。登りにかかって雪が締まるかと思いきや、これまで同様のワカンでも5cm程度沈む重い雪で、登りでは非常につらい。荷物が軽ければこんな程度は問題ないと思われるが、いきなり牛歩戦術となってしまう。時々足を止めて息を整え、再び歩き出す繰り返しで全くペースが上がらない。鞍部からカッパ山まで標高差は僅か120m、雪の状態が良ければ15〜20分程度と思うが40分もかかってしまった。斜面一帯がシラビソ樹林であった。

新カッパ山山頂。やたら広い 新カッパ山から見た至仏山


 山頂部に出ると傾斜が無くなって台地状の平坦地に変わり、少し進むと樹林が切れて展望が開けた雪原になった。地形図では東西2つのピークが描かれているが現場に立つとピークがあるのは感じられないほど平坦だった。1822m峰は台地の西端なのでそちらに進み、らしき場所で周囲のシラビソに標識等が無いか探してみたがここでも発見できなかった。いつの間にか天候が回復し、この付近は晴れて暖かくなっていたのでザックを雪原に横倒しにして人間はその上にひっくり返って休憩した。

だだっ広いなだらかな尾根を進む 鞍部付近


 しばしの休憩を終えて出発、なだらかでガスったら厄介な尾根を北上し、1898m峰へと上り始める。この尾根もシラビソ樹林が続き展望はイマイチだが、ずっと樹林が密生しているわけではなく開けた場所があちこちにあってピークの位置を確認できるため、ガスさえなければ安心して歩ける。この登りは非常に緩やかだがこの雪質にこの荷物では非常に疲れた。この疲労度では今日はどこまで行けるだろうか。計画では明日一番に白沢山を往復の予定で、それを考えると大白沢山を越えてその西の1911m峰の南側鞍部付近まで行って幕営したいところだ。1911m峰南側は緩斜面なのでてっぺんは通らずに南側を巻くことができよう。さて、そこまで体力が持つだろうか。

ワカンでも重い雪が続く 1898m峰山頂部
1898m峰からのパノラマ展望写真(クリックで拡大)


 ほうほうの体で1898m峰に到着。ここで景鶴山方面からのトレースが登場するかと思ったら全く足跡が無く、この先も重雪ラッセル続行が確定だ。よほど休もうかと考えたが旧カッパ山まで頑張ることにしてどこが尾根なのか分からないような緩やかな稜線を進む。ここは視界が無いと本当に心細いだろう。今はカッパ山が見えているのでその方向に進めばよい。

旧カッパ山山頂
旧カッパ山から見た東半分の展望(クリックで拡大)
旧カッパ山から見た西半分の展望(クリックで拡大)


 鞍部から山頂まで僅か標高差40m程度なのにバテバテになって到着、ザックを放り出して休憩タイムにするかと思ったが、この状態では大ザックを背負ったまま大白沢山に登るのはえらく時間がかかりそうで、計画を変更して手前の鞍部に荷物をデポして空身で大白沢を往復し、ザックを担いで大白沢山を北から巻いてしまうことにした。そのため、休憩は大白沢手前鞍部で取ることにして写真撮影だけして先に進んだ。まあ、鞍部まで下りなのでバテた足でも問題ないし、山頂は冷たい風がモロに吹き抜けて休憩に適さないこともあった。

大白沢山向けて下り始める
シラビソ樹林が続く 鞍部付近
アタック装備で登りにかかる 稜線上は雪庇がうねる


 シラビソの点在する緩やかな尾根を下り1850m鞍部に到着、シラビソの根元にザックを置いて休憩。風が避けられて日も当たるし休憩にいい場所だった。小さなアタックザックに防寒装備とアイゼンを入れて大白沢山頂を目指して出発。尾根は大きな雪庇が発達し、南側は垂直の岩壁で雪庇には多数のクラックが入っているし、雪庇のうねりも大きいので雪庇の頭よりかなり北に寄ってルート取りした。さすが空身だと疲れた足でも軽く感じ、ラッセルもかなり楽だ。特に危険箇所は無くアイゼンを置いてくればもっと楽ができたなと感じたが、それは結果論であり常にリスクに対応した装備は必要であろう。

森林を抜ける 大白沢山山頂
大白沢山から見た西半分の展望(クリックで拡大)
大白沢山から見た東半分の展望(クリックで拡大)


 傾斜が緩むと東西に長い山頂の東端に到着、ここで大きなシラビソが姿を消して雪原となる。西風に逆らって進んでいくと途中から真新しいスキー跡が登場、どうやらワル沢源流部から上がってきたようだ。地形図の崖マークの西側は緩やかな尾根なのでスキーでも通過できるのであろう。残念ながらスキー跡ではラッセルから開放してくれるような雪の締まりをもたらすまで至らず、こちらは常に数cmの雪の沈みと戦い続ける。西端付近でそれより先に行くと高度が落ち始める箇所が大白沢山山頂で、ここは矮小なシラビソがあるだけで展望が開けていた。

大白沢東鞍部へと下る 大白沢北側を巻く
北側から見た大白沢山 大白沢西稜線の露岩


 往路を戻ってザックを回収、大白沢山の北側の傾斜が緩い場所を西に進んでいく。北斜面は結構な傾斜で雪面に亀裂が入っている場所もあり、こちらから登るのはヤバそうだ。山頂を回り込んで主稜線へと登り返すと大白沢山西側直下の様子が見えるようになるが、尾根上に大きな露岩が鎮座し、北側を巻くにはかなりの急斜面を使う必要があり、ここは南を迂回するのが正解だろう。

再び県境稜線に出る
スキー跡あり 大白沢山を振り返る
1911m峰を巻き稜線東を進む 雪庇蔭のここに幕営
幕営地点付近から見た尾瀬ヶ原方向


 県境稜線に出て大白沢山西側鞍部からは稜線を離れて1911m峰南斜面をトラバースする。ここに至ってスキートレースが同様にトラバースしているのを発見した。スキーは潜らないがワカンは潜るなぁ。あとは幕営地点を探しながら進んでいく。下りにかかると稜線上は雪庇、東斜面は緩斜面で水平な場所はないが雪庇がいい風除けになるのは間違いない。斜めの場所でも「土木工事」すればいい。うまい具合に雪庇の近くにシラビソが生えた場所があり、その間は雪が吹き溜まって小さいながら水平な場所があり、ここを今夜の宿に決めた。この南側の鞍部近くの1852m峰よりもやや北側であった。明日は空身でここから白沢山を往復だ。

雪庇上からテントを見下ろす 夕方近くに上がっていったスキーヤー


 ピッケルを振るって雪を水平にならしてテントを設営、雪庇が西風を完璧に防いでくれて快適なテントサイトであった。夕方になって天候が崩れて霰が降ってきたが大降りすることはなかった。夜中の最低気温は-5℃で寒さはそれほどではなかったが、2重の断熱マットでも背中が冷たく快眠とはいかなかった。でも夜で-5℃なら明日朝はもっと冷え込んでカリカリにクラストした上等な雪質が期待できそうだ。

 腕時計のアラームをかけたのだが気づかずに起床が遅れて周囲は既に薄明るくなりはじめていた。雪質のいい時間帯に距離を稼ぐべく急いで飯の準備を始めた。火を使う前に温度計を見るとなんとプラスではないか! 夜よりも気温が上昇している。どうも今日は天候が下り坂で南風が入っているのが原因らしい。くそ、せっかくいい雪質になると思ったのに。

早朝のスズヶ峰と赤倉岳
1911m峰へと登る 1911m峰。赤いツェルトあり
1911m峰から見た上越国境(クリックで拡大)


 朝飯を終えてテントはそのままにしてザックに防寒着、アイゼン、ワカンを入れて出発。いくら気温が高めとはいえ4℃くらいなので雪が締まってワカンを使わなくても沈まなくなっていた。ワカンが不要ならその方が楽なので登山靴のまま出発。1911m峰への登りは稜線を行こうとしたが雪庇のうねりが激しくアップダウンが激しくて無駄な労力が掛かるので、昨日のように稜線東側の緩斜面を登っていく。1911m峰近くで雪庇のうねりが落ち着いたところで尾根に戻る。ピーク上にはスキーを支柱にしたツェルトがあった。まだ中の住人は寝ているというわけか。ここを越えると今朝付けられた新しいアイゼン跡が北上していた。先行者だ。さて、姿が見えるだろうか。

1920m峰は西側を巻いた 1920m峰北側から平ヶ岳方面を見る


 次の1920m峰は西側を巻いたが結構傾斜があったし標高差のロスは20m程度なので稜線を行った方がよかった(帰りは尾根上を行った)。1790m鞍部への下りはこれまたうねった雪庇が登場、今度は東側は壁になっているので西側の根元を行った。先行者の足跡も同様だ。この尾根は雪庇ができるので東側が開け西側はシラビソ樹林が続いた。

最低鞍部付近 南を振り返る


 最低鞍部からはシラビソの点在するだだっ広い尾根を適当に登っていく。重い荷物が無くラッセルもないので登りでも快調だ。1895m峰から先はシラビソが減って視界が開けて展望を楽しみながらの登りとなる。開けた尾根になったので先行者がいれば姿が見えるはずだが足跡はあっても姿が見えない。

樹林が切れてきた 広い雪原を登る
もうすぐ山頂 白沢山山頂(木がまとまった部分)
白沢山から見た平ヶ岳に続く稜線
白沢山から見た南側の展望(クリックで拡大)
白沢山から見た西〜北側の展望(クリックで拡大)


 もう一段の登りで白沢山山頂に到着。てっぺん付近はこれまただだっ広い地形で明確な最高点はないが、地形図では東端付近に三角点があるはずだ。もちろん今は数mの雪の下だが。標識があると思ったがここにも無い。まあ、これだけ広い山頂部だと別の場所にあるかもしれないけど。先行者の姿はここでも見えず、足跡は更に北上していた。どうも平ヶ岳まで足を伸ばすようだ。私は夏場に平ヶ岳山頂は踏んでいるので今回はここでUターンだ。

鞍部付近ですれ違ったパーティー 1920m峰手前ですれ違ったパーティー
1920m峰を登るパーティー テント到着
1911m峰から見た尾瀬ヶ原方向(クリックで拡大)


 同じルートを戻ると予想外に次々と北上するパーティーとすれ違った。総勢20人を下らない人数で、聞けばみんな平ヶ岳往復だそうだ。全く知らなかったのだが、この時期に尾瀬から平ヶ岳に登るのはスタンダードなルートとなっているようだった。まあ、こんなコースはこの時期しか不可能であろうが。スキーヤーは思ったより少なく1名だけだった。1911m峰のツェルトの主は撤収の真っ最中であった。そして足跡はここで全て東へと下っており、スズヶ峰方面の足跡は私のものだけだった。景鶴山方面から縦走してきたというよりも、尾瀬ヶ原から猫又川源流部をあがってきたと考えるのが妥当だろう。

スズヶ峰へと向かう 稜線東側にトレース多数


 テントに戻ってこちらも撤収、今度は全ての荷物を背負ってスズヶ峰へと向かう。ここは昨日夕方に途中の肩にテントらしきものが見えていたのだが、今でも見えているので主は軽装でどこかお出かけのようだ。尾根の登りには明瞭なトレースが見えており、昨日はそれなりの人数が登ったか下ったようだ。

スノーシューの男性 一気に高度を上げる


 既に雪が緩み始めたのでワカンを装着して出発。鞍部へ下って登りにかかるとスノーシューを履いた単独男性が下ってきた。話を聞くと昨日に赤倉岳を往復したとのことで、尾根の様子を聞くと危険箇所皆無でアイゼン不要だという。おお、ラッキー! これならアイゼンを置いてもっと軽くなって往復できる。地形図を見ると途中で崖マークがあってナイフリッジとかになっていないか心配だったが、これで気持ちに余裕を持って赤倉岳に向かえる。

1930m肩のテント スズヶ峰へ緩やかに登る
後ろを振り返る スズヶ峰山頂
スズヶ峰から見た北半分の展望(クリックで拡大)


 スズヶ峰直下の1930m肩に残置テント登場、見えていたのはこれだった。そこから山頂はすぐでここもだだっ広い山頂だった。西側に低いシラビソが生えているだけで、あとは雪の下だ。今回は手製の山頂標識が設置されており、今までの山よりも登る人が多いように思えた。昨日のトレースは多数残っている。まだ雪の状態は良好で、昨日のような地獄のラッセルではないので重い荷物を背負っていても快調で、休憩せずに赤倉岳を目指すことにした。

1910m肩へ向かう スキーと足跡両方あり
1910m肩。テントあり ここに荷物を置いて赤倉岳へ出発


 赤倉岳へはスズヶ岳から直接下ることもできるが、この尾根は幅広くなだらかでもっと下からも可能だ。赤倉へは空身で往復するので、帰りの登り返しを考えると荷物はできるだけ標高が低いところにデポした方がお得である。その最適地は1910m肩と判断、そこまでは荷物を背負って下っていく。なだらかな尾根が続いて高度計が無いと現在位置の確認が難しいが、1910m肩は意外に明瞭な場所でこの先は明確に大きく下る地形だったのですぐにわかった。先客だろうか、この肩にはテントが張ってあった。シラビソの根元に大ザックを転がし、アタックザックに防寒着だけ入れて再出発だ。この時点では快晴で顔が日焼けしそうな状況で、顔には日焼け止めを塗りザックに帽子を突っ込んだ。

少し下ると足跡がまとまる 鞍部から先は樹林が切れる模様


 赤倉岳へ繋がる尾根はなだらかで広く、尾根上はシラビソに覆われて先の様子が分からないので適当に樹林を下り始めると昨日のものと思われるいくつかの足跡がすぐに出現。やがてそれらは1本のトレールにまとまって樹林の中に伸びていた。やはり軟雪でけっこうな深さで足跡は潜っているが、まだ午前中の時間でしかもワカン装着なのでほとんど沈まず快適だ。今の雪質だと表面が荒れたトレース上を歩くよりまっさらな雪の上の方が楽だった。鞍部付近でシラビソの木の間にテントを張った跡があり、雪を整地してブロックを北側に積み上げた本格的な土木工事がなされていた。

幕営跡 雪原を登る
かなり広い尾根。ガスったらヤダなぁ
トレースが延々と続く 間もなく1940m峰


 鞍部から登りにかかると樹林が切れて展望が広がり、傾斜はそこそこ急だが広い雪の稜線が立ちはだかる。昨日の足跡は下りの足跡がほとんどで歩幅が登りと合わないのが歩きにくい要因だ。高度が上がると展望が広がってくる。しかしいつの間にか雲が増えてきて太陽が隠れてしまった。まあ、その方が雪が緩むペースが遅くなって助かるけど。

1940m峰から先の尾根。ずっと雪が付いている ナイフリッジというほどではない


 1940m峰から先がゲジゲジマークのある区間に入るが、実際は崖らしき地形は見られないし稜線上は雪庇が続いて特に危険と感じる箇所は登場しなかった。山頂手前の小鞍部で多少尾根が痩せるがナイフリッジはなく淡々と通過できた。

赤倉岳山頂最後の登り 赤倉岳山頂
赤倉岳から見た東方向(クリックで拡大)
赤倉岳から見た奥日光(クリックで拡大)


 最後に僅かに突き上げて赤倉岳山頂に到着。西側のみシラビソが生えているがあとは樹林は無く基本的に展望がいいが、既に上空は一面の雲に覆われ西風が強まりつつあった。山頂には目印、標識等は無く足跡はまだ先に続いておりもしかしたら本当の山頂はもっと先かと思って地形図とGPSで確認したが、最初のピークが間違いなく山頂だった。風が強く休むような環境ではなくすぐに引き返した。登りで苦労した鞍部への急な下りも楽々だ。樹林帯を登り終わって1910m肩に出ると、これから赤倉岳を往復すると言う3人パーティーが出発準備中で、ルート上に危険箇所は無いことを伝えた。私は何も調べてこなかったがどうやら赤倉岳への出発地点は1910m肩が一般的なようだ。

岳ヶ倉山へ向かうため稜線を南下 1818m峰へ登る
1818m峰から見た北側の展望(クリックで拡大)
1818m峰から見た岳ヶ倉山
1818m峰から見た奥日光


 さあ、残るは岳ヶ倉山のみだ。基本的に下る方向なので体力的に問題はないだろう。どうも天候は下り坂のようで雲が厚くなってきているがまだ雨の気配は無い。この程度で持ってくれればいいが。広い雪庇の稜線をどんどん下っていく。今までの県境稜線と同様に雪庇の影響らしく尾根東側は樹林が無くて尾瀬ヶ原方向は常に展望が開ける。1818m峰ではスキーヤーが休憩中、その先に一連のピーク群があり、地形図によると岳ヶ倉山山頂は一番奥(南端)ピークだ。少し雪が緩んできたが昨日よりはずっとマシで助かった。

岳ヶ倉山ピーク群の北端ピーク ピーク群を南下
岳ヶ倉山山頂 山頂標識
岳ヶ倉山南側から見た至仏山へ至る稜線
岳ヶ倉山南側から見た尾瀬ヶ原方面(クリックで拡大)


 最北のピークに上り詰め、あとは小さなアップダウンで岳ヶ倉山山頂に到着。ここも今まで同様西はシラビソ、東は雪庇で展望が開けた場所だった。ここもささやかな山頂標識が設置されていた。そういえば今回は全ての山が群馬県にかかっていたはずだがGさん標識は1つも目にしなかったな。Gさんは残雪期の山はやらないのだろうか、それともペンチマンに駆逐されてしまったのだろうか。山頂で休もうとしたら雨が降り出してしまい、こんな開けた場所では雨宿りする場所は無く休憩どころではない。急いでゴアを着て下山を開始した。このまま降り続けたらヤダなぁ。どうせなら雨よりも雪の方がまだマシなのだが。

1727m峰は東斜面をトラバース 1727m峰の下り
岳ヶ倉山方向を振り返る 1663m峰を見下ろす


 まだまだ気持ちのいい雪稜が続き、1727m峰で尾根が左に曲がり、ここは東斜面をトラバースして山頂はショートカット。このピークを境にシラビソにブナが混じるようになり標高が落ちてきたことを感じさせる。1620m鞍部付近はシラビソは完全に消えていて、1663m峰は再びシラビソが混じるようになったので、この辺りの標高がブナとシラビソの勢力範囲境界のようだ。1620m鞍部で雨がほとんど止んでくれてゴアでは暑いのでTシャツに戻った。ここで下降地点を確認しようとウェストポーチから地形図を出そうとしたら見つからない。どうも赤倉岳で地図を広げたときに落としたらしい。下降点の詳細な場所は覚えていなかったが、確か明瞭なピークを一つ越えてその先の一連のピーク群で東に下るのが効率が良かったような覚えも。まあ、最終的にはどこからでも東に下れば猫又川沿いに出られるので効率を気にしなければ細かいことを気に病む必要は無い。

1663m峰の登り 1668m峰
1668mで稜線を離れる だだっ広い斜面を適当に下る
途中で見かけた熊棚 猫又川右岸のトレースに合流


 顕著な1663m峰を越えて南北に細長い1668mの一角に登りつくと、先行者の足跡は主稜線を外れて東に下り始めた。おお、たぶんここが私が下降を考えていた場所なのだろう。私もここから下ることにした。しかもできるだけ猫又川下流で平野部に出られるように右に進路を振る。先行者の足跡は私よりも北側を通っているが、下りだったらラッセルでも滑り降りることができて楽なのでトレースは不要だ。結構ないい傾斜でワカンを滑らせることができた。やがて顕著な尾根になり、まっすぐ上ではなく南斜面をトラバースし南東に下る枝尾根に乗って高度を下げ、とうとう川沿いの平野部に出た。ここで多数の足跡とスキー跡が登場、メインルートに乗ったことになる。

高巻き個所 こんな倒木もあった
尾瀬ヶ原西部から見たスズヶ峰方面
至仏山の斜面にはスキーヤーが多数見えた テントで賑わう山の鼻


 あとはこのままルートに乗って鳩待峠まで戻るだけだ。平坦部でも雪の上では下りと違って体力を使い、Tシャツのままでもさほど寒さは感じない。またいつ雨が落ちてきても不思議ではないがいつまで持ってくれるか。尾瀬ヶ原西端を突っ切ってテントがたくさん並んだ山の鼻に到着、ここで大休止。よく考えたら雨の影響で1910m肩からまともな休憩無しにほとんど歩き続けてきたしなぁ。防寒着を着込んでザックを寝かせてその上に座り、少し遅い昼飯タイム。ところが食事中に急に大粒の雨が落ちてきた! そのままでは濡れてしまう強さで急いでゴアを着て、まさか出番が来るとは思わなかった雨傘を展開した。これではのんきに休憩している状況ではなく、疲労は抜けないが鳩待峠までがんばることにする。雨が降り始めても尾瀬への入山者がポツポツとやってくるし、後ろからは下界へ戻る人の姿も。こちらは大ザックでの登り返しなので軽装の人にはどんどん追い越された。

 橋を渡って右岸に移り、高巻きするところでメインとレースを離れて小さな高巻きで川沿いに進んだが、その後の細かいアップダウンを考えるとトレースにしたがって大きく高巻きを続けたほうが楽だったかもしれない。でも川沿いコースにもトレースはあるし大集団が木陰で雨宿りしていたりした。

鳩待峠へ最後の登り 鳩待峠到着


 峠が近くなるとトレースは斜面にとりついて一気に高度を上げる。そしてメイントレースと合流すれば鳩待峠はすぐだった。降りしきる冷たい雨で体を動かしていないと防寒着が必要な気温で、急いで着替えを済ませた。出発時は凍っていた駐車場はすっかり水溜りだらけ、巻いたままのチェーンが不自然だった。

 

 

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